地下音楽通信

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NWW List全部聴く 第12回 Arbete och Fritid - Arbete och Fritid

こんにちは。コエムシです。

今回Arbete och Fritidを聴いていきます。

 

というわけで早速紹介に移ります。

Arbete och Fritidはスウェーデンプログレッシブ・ロックバンドで1969年から活動していました。今回紹介するのはセルフタイトルの1stアルバムです。

 

ちなみにこのバンドはメンバーが皆マルチプレイヤーで様々な楽器を演奏できることが大きな特徴で、曲ごとに雰囲気がガラッと変わります。

 

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メンバーの不敵な笑みから只者ではない雰囲気を感じます。

 

1. Gånglåt Efter Lejsme Per Larsson, Malung

最初の5秒で不意に射抜かれたかのような衝撃。おそらくこれまで聴いた音楽の中でも上位に入る驚き。曲が始まってからも民族音楽とジャズを融合させたような凄まじい音の応酬。海外の祭りのような盛り上がりで間違いなくアルバムのハイライトである。

 

2. Elâzig-Dans

ふたつの笛の音色が平行的に交わることなく同じ旋律を弾く。そこに打楽器が加わることでより民族音楽的に感じられる。

 

3. The European Way

9分にも及ぶ大曲。ボーカルのアカペラから始まる。ゆったりとして各楽器の演奏もこれまでより余裕を感じる。途中に一曲目のような盛り上がりの片鱗を見せるがそれも一瞬で消える。中盤から不穏なリフレイン。そして一時の沈黙から終盤はひたすらブラス楽器とドラムのアンサンブルが展開される。

 

4. SlavvalS

「こんなのもできるんだぞ」という意気を感じるゆったり落ち着いた休日のような雰囲気で間抜けた曲調。これと一曲目を聴いただけでこのアルバムの異常さが伝わる。恐ろしい底力を見せつけられた。

 

5. Halling Efter Ulrik Jensestuen, Valdres

ひたすら明るいヨーロッパの民族音楽のようなリフを吹き続ける笛とポコポコと心地よい打楽器の音。これが永遠に続きそうなほど没入させられる。

 

6. Nidälven

また落ち着いた曲調だが仄かな明るさも感じ心地よい。ボーカルもちゃんとメロディにのっている。

 

7. "Petrokemi Det Kan Man Inte Bada I"

ハードなノイズギターサウンドでこれまでの民族音楽風とは全く違う「ロック」を演奏している。フリーなブラス楽器をソリッドなドラムがハードさをより引き立てる。メロディの変化はないが、ノリがよく、しかし軽すぎず絶妙なバランスで6分間飽きることなく楽しめる。歌も合唱でライブのような臨場感がある。終盤になると奇妙な声と共に楽器の数が減り、弦楽器のフリーな演奏で唐突に幕を閉じる。

 

8. Dagen Lider

沈黙の中、遠くから聞こえてくる歌声。金属音は耳元で鳴り響く。男女のデュエットのダークで囁く歌声。中盤には尺八のような音色が鳴り響く。深みのある曲で、アルバムに立体感をもたらしている。

 

9. Pols Efter Steffen Henningsgård, Brekken

ライブ音源で弦のチューニングから始まる。民族の祝祭の雰囲気を持ったリズム感とメロディが音圧を増しながら延々と続く。

 

10. Vägen Till Nyvla

悲壮感漂うピアノの音色。予想できない曲の数々を締めくくるにはあまりにもふさわしい、サバンナの夕暮れを見るような哀愁と喪失感のある笛の音。明るく眩しい一時が終わり、ただただ闇を待つのみとなった。アルバムを通してそのような意思を感じる。

 

これまで聴いたアルバムの中でも最も衝撃的であり、これに出会えただけでもこの企画の価値があったと思えるほど素晴らしい曲の数々だった。ひとつも同じようなものはなく、全てが移ろいで最後は消えていく。特に1曲目と4曲目のギャップは目を見張るほどの驚きがある。このアルバムを埋もれさせてはいけない。

 

ご覧いただきありがとうございました。

次回はAreaです。