地下音楽通信

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NWW List全部聴く第7回 "A"trio & AMM - AAMM

ご覧いただきありがとうございます。

 

今回はちょっと特殊で連名のアルバムを紹介します。もともと紹介する予定だったのがAMMです。1965年に結成されたフリー・インプロヴィゼーション・グループです。商業的な成功は収めていないようですが(というよりNWW Listで商業的成功をしてるアーティストのほうが少ない)、即興音楽界に多大なる影響を与えたとされます。

 

そんな即興音楽の重鎮と共同で今作を発表したのがレバノン発のフリー・インプロヴィゼーション・グループの"A" trioです。電子音楽家とトランぺッターとギタリストという異色のトリオです。

 

ではアルバムの紹介にうつります。

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このアルバムは2019年に発表されたもので約50分の1曲のみの作品となっています。

 

1. Unholy Elisabeth

 美しいピアノの音色と床の軋むような音が廃墟のような雰囲気を漂わせる。聴いている方の骨の髄まで緊張感が広がる。体を動かすと骨がピキピキと痛みそうなほどの冷たさ。5分を過ぎると序盤の緊張感から段々と解放され、弦楽器の不協和音とノイズの渦に飲み込まれていく。


再び静寂の中で響くピアノの音と弦を弾いたような高音。しかし、そこにリズムはなくフリーな演奏である 。
そして10分頃に再び先の見えない金属的なノイズに流されていく。奥では工場のような人工的なノイズも待ち構えている。そしてノイズは絶えず変容していく。
17分頃には弦を擦るような音とともにエフェクトかかりまくりのゴロゴロとしたノイズ、さらに弦を擦る音は溶接のような断続的な音の響きを見せていく。後ろでは叫び声のようなノイズ。そして激しさを増す弦の音。


また落ち着きを取り戻し、静寂へと移ろいでいく。これまで通りの不穏なピアノ。いつ追いかけてくるか分からないノイズに怯えるかのような緊張感。


単に物を叩くような音から電子音まで様々な楽器の断片的な音が至る所から鳴って聴者の不安を掻き立てる。包丁で野菜を切る音、廊下を歩くような打音といった生活音に段々とエフェクトをかけて非現実的なサウンドを生み出す。そしてそれがノイズへと変化する。

ノイズの波に飲み込まれるかと思えば落ち着き静寂へと戻る。馬の足音のような子気味良いリズムでならされる打音、一切の協和を無視した弦の音などいつノイズに転換されるか分からない。幾度目かの不穏なピアノの演奏。
地響のしそうな低音が響き渡る。


テープを逆再生させたかのようなノイズにドアの軋む音、ブラス楽器の音がどんどん増長されていく。爆音ノイズになるかと思えば、落ち着き、ピアノパート。


いつの間にかシークバーも終わりに近づいている。この調子で残り三分が終わるのか、もうひとつ大きな変化が構えているのか。凶暴さの片鱗を見せつけるノイズ。最後の緊張。恐怖が次第に遠のいていきラストは完全なる静寂と雨音。

 

一切の説明を拒み、変化し続けるエクスペリメンタル。常にノイズに追われ、50分間でノイズの影が無くなることはない。深刻で極度の緊張を持った油断ならない体験。

 

皆さんもぜひ聴いてみてください。

ご覧いただきありがとうございした。

次回はAmon Düül です。お楽しみに!