地下音楽通信

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個人的名盤紹介第1回 あぶらだこ - 木盤

 こんにちは。NWW Listばかりを聴く生活は辛く、ブログの更新も遅くなっている状態なので、今回から愛聴盤を紹介していきます。

 

 というわけで今回紹介するのはあぶらだこ木盤です。あぶらだこといえば変拍子、難解な歌詞(本人は否定している)、狙っているかのような奇妙な声のボーカルなど売れる要素が全くないバンドですがその魅力について解説します。

 

 あぶらだこは1983年に結成されたロックバンドで、アルバムごとに音楽性を変化させ、マイペースに活動しています。なぜマイペースなのか。それは社会人バンドだからです。サラリーマンの傍ら変態的な音楽をやっているのです。いや、副業だから好きなようにできるのか。

 

全てが「あぶらだこ

 このバンドはあまりにも個性的すぎてここですべてを語ることはできないのですが、あぶらだこを紹介するうえで欠かせないのはアルバムタイトルがすべて「あぶらだこ」であることです。よく「セルフタイトルは名盤が多い」などと言われたりしますが、それはあぶらだこの前では通用しません。なぜならすべてのアルバムがセルフタイトルだから。そのため、あぶらだこのアルバムを識別する際はアルバムアートワークから「~盤」と呼ばれます。今回のアルバムであれば木の陰がトリミングされているため通称「木盤」です。

 

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アルバム

 今回紹介する木盤はあぶらだこの1stアルバムで、Ruinsの吉田達也がサポートメンバーとして参加しています。このアルバムの特徴といえばハードコアとの過渡期であるという点です。「ROW HIDE」や「ダーウィンの卵」はハードコアの香りが残りますし、ラストの二曲「PARANOIA」そして「翌日」の流れからはハードコアとの決別を感じ取れます。演奏においてもあぶらだこの粘っこさ吉田達也の軽やかで飛び回るようなドラミングのバランスが絶妙で奇跡ともいえるレベルに仕上がっています。

 

全曲紹介

1.FARCE

 吉田達也による祭囃子のようなリズミカルなドラミングから始まる。軽いギターの音とノイジーなギターが交互に流れ、ヘヴィな雰囲気へと変化していく。そしていつも通りの奇妙で絡みつくようなボーカル。一体なにをうたっているのか不明な歌詞。アクティブなベースラインとノイズを生み出すだけでメロディに寄与することのないギター。一体なぜメジャーデビューできたのか。曲が終わったかと思えばラスト15秒は謎のシャウトが襲い掛かる。

 

2.S60

 これまた重い、暗い曲調で「60年代」という短い意味深な歌詞を連呼するだけかと思えば、急にハイテンポになり、非言語のシャウトをひたすら続ける。再び、重く暗いベース主体に「60年代」の連呼。そして、同じようにハイテンポ、シャウトと同じ道をたどる。

 

3.ROW HIDE

 アクティブなベースラインが目立つイントロ。相変わらずの奇怪なボーカル。4小節ごとに入る休止。前面に立ってメロディーを支えるベースライン。ノイジーなギターと動き回るベース、手数の多いドラムが奏でる間奏部分。そして「どうでもいい」と早口で連呼するボーカルは放っておけない。

 

4.象の背

 現代詩的な歌詞にこれまでと打って変わって単純なベースがメロディを奏でる。後ろで小さくなるシンバルとギターノイズ。なんといってもギリギリ理解できそうな歌詞と聞き取りやすいボーカルが聴者を惹きつける。

 

5.生きた午後

 イントロの乾いたドラムの音が気持ちいい。ここでもメロディそっちのけでノイズを生み出すギターとこれまでの曲で最も多くの手数を駆使するドラム。ベースは意外と単調である。この曲のドラムは吉田達也でなければならない。個人的なアルバムのハイライト。

 

6.ダーウィンの卵

 ハードコア的なスピード感と重さを感じる。初期衝動的ではあるが、歌詞の難解さやテクニカルなドラムを聴くと勘違いだとすぐにそれが気づく。本作の中で最もテンポが良く、ある意味でポップな曲である。曲の構成は一曲目のFARCEと非常によく似ている。

 

7.ティラノの非苦知

 ギターはどこへ行ったのか。と思わせるほどボーカルが始まるとギターの音がどこかへ消えてしまう。いや、リズム隊の迫力がそれを押しのけてしまうのか。しかしベースとドラムだけでここまで厚みのある音を表現できるのが驚きである。実はこの時点でRuinsの成功は目に見えていたのではないか。そして毎度吉田達也のドラミングにも驚かされる。

 

8.BUY 

 リズミカルなベースから始まるこの曲。ドラムも乗っかり、さらに非言語シャウトも加わる。そして「父が死に 母が死に」と歌が始まる。This Heatの「Horizontal Hold」と完全に同じリズムで。何を隠そうこの曲はボーカルの長谷川裕倫が三日三晩、This Heatを聴き続けて生み出した曲だという。そう、オマージュなのである。ボーカルが終わると再びイントロと同じメロディからのシャウト。そして「GIGIが死に BABAが死に」と同じ展開を迎える。ラストはひたすら非言語シャウトが続く。

 

9.PARANOIA

 これまでになく重さを感じるベース。そして落ち着きのあるボーカル。この時点で長谷川裕倫は20代中盤のはずだが、40代のようなしゃがれた貫禄のある声である。なんといっても「PARANOIA」なのだからそれを表現してのものなのかもしれない。「打ち砕かれたのは 43回目の春」といった歌詞をいかにして20代の若者が書けるのか。私はこの曲を聴いたときにただうろたえた。

 

10. 翌日

 アルバムのラストを飾る約8分の大作である。序盤は重く単調なベースのみだが、ドラムが加わり、ギターもあぶらだこ異世界を表現している。退廃的な雰囲気を醸し出し、まさにこの世の終末の「翌日」を表しているかのような作品である。だんだんとテンポを上げて盛り上がっていく。ギターはカラスの鳴き声のようにも聞こえてくる。曲も5分を過ぎ、終盤を迎えるところに急に「あぁ~~~」という苦しみ悶えるような叫びと「青い太陽はどこにでもいるし」というわけのわからない歌詞。アルバム唯一のフェードアウトで曲とともにアルバムは徐々に消えていく。

 

 

 私が最も好きなバンドである、あぶらだこの木盤を紹介していきました。本作はサブスクでも気軽に聴くことができますので是非聴いてあぶらだこワールドにどっぷり浸かってみてください。今後もNWW Listを聴くのがつらくなったら、愛聴盤を紹介していきます。

 

 また、あぶらだこはアルバムを再発しましたので是非チェックしてみてください。

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 ご覧いただきありがとうございました。